予想以上に面白かったです。
モンテ・クリスト伯
宝塚で最初の「モンテ・クリスト伯は・・・・
アレクサンドル・デュマの名作「モンテ・クリスト伯」は日本の演劇界において、非常に馴染みのある作品で
ストーリー性のよさから、再演され続けてきたという事です。(ごめん・・・私は見た事ないので)
じゃあ、宝塚における最初の「モンテ・クリスト伯」は・・・というと、昭和11年に月組で上演されたようですね。
脚本・演出 → 中西武夫・・・葦原邦子主演の「憂愁夫人」が代表作。当時の中西評は「外国のものを取り入れるのが上手」
という事で小池修一郎風だったのかなあ。
その年の話題をかっさらったのはいい意味でも悪い意味でも東郷青児の「ゴンドリア」で。
東郷先生は、いわゆる正塚先生風とでもいうか。そんな出来不出来の激しい人だったようで。
中西武夫作「モンテ・クリスト伯」評は「いい曲がない」「船の印象ばかり」「スペクタクルに欠ける」
など言われたい放題でした。
というのも、これはいわゆる「宝塚少女歌劇」としてふさわしい作品ではないと思われていて
そういうものを宝塚でやる事に抵抗感というか、賛否両論があったようです
当時、観客の半分は男性。そして批評するのも男性が多く、レベルの高い外国文学を演じる事に
「すばらしい」という人がいた一方、「どうせこんなの女子供にはわかるまい」みたいな見方をする
人もいたんですね。さらに新劇のような思想的な作品をやるのは少女歌劇の意義に反する・・・みたいな?
なかなか難しい話で、それで色々言われたんじゃないかと
ぶっちゃけていえば「つまらなかった」って話なんですが。
主演 → 小夜福子・轟夕起子・・・・小夜福子がどんなスターだったかと言えば、星組の葦原邦子、月組の小夜福子という
当時、人気を二分する大スターでした。中世的な顔立ちと柔らかい印象。いうなれば
天海祐希風のスター?「ベルばら4強」風人気スター?(ノルさんのご先祖だし)
斬新な作品はまず月組から・・・という不文律があったようで(そこらへんは戦後も同じですね)
「モンテクリスト伯」もそんな作品の一種。
小夜がエドモンを演じてどんな評を得たのかは、私は当時の歌劇や脚本集を持っていないので
わからないのですが、池田文庫に行けばコピーがとれるかも。誰か調べたら教えてください。
轟のメルセデスがどんなだったかも、ちょっとわからないんですが、あの美貌ですしね。
わりとすごみのある娘役評だったような気がします。
石田昌也外国文学第2弾
石田先生の作品といえば
・ ぶつ切り場面の羅列
・ 下品な言葉遣い
・ 極端な男尊女卑
的なイメージが強いもので女性ファンには大不評。
ご本人もそのあたりを意識し始めたのか、路線を変えたのか・・・
前回の「復活」はあまりにもひどすぎて ラストはどうなったの?的な疑問が多かったので
思わず原作を買って読みましたよ。
今回の「モンテ・クリスト伯」は作品的にまとまっていて(時々「?」な展開やセリフがあるものの)
いい出来だったのではないかと。
でも、この作品がいわゆる「宝塚的でない」というのは戦前も今回も共通のようで、パンフレットの中に
「お手紙を頂戴した。『イシダ先生、SMAPの木村拓哉さんが出演していた「君を忘れない」をご覧になった事がありますか。
木村拓哉さんはゼロ戦のパイロット役でしたが丸坊主ではなく、ロングヘアを風になびかせた・・かっこいい特攻隊員でした・
だってファンは坊主頭のキムタクなんて見たくありませんから」。
かつてオスカルやバトラーを演じたトップ・スターが人力車夫を演ずる作品もあったが、昨今のファンは
イケメン役じゃないと許してくれない・・・・・」
という一文があり、ゆえに今回は凰稀に囚人服を着せず、牢獄生活を10分におさえて、解説も加えた物語にしたようですね。
ちなみに私、キムタクの「君を忘れない」は5回くらい見ました。
とにかく泣ける作品で、少しくらい違っててもまあいいっか・・・・と思って。でも後にこれがきっかけで、戦中史に興味が
あり、色々読み漁り、ちょっとくらいどころか全然違ってたーーと愕然としたものです。
(軍服がチョコレート色だったのも違うし、階級制の軍隊で少尉と下士官がタメ口ってのもありえないし?
キムタクは髪をポニーテールにしてました。でも陸軍じゃなく海軍だったのでわりとお洒落が許されてたみたいな?風潮は
あったようで、監督はそこを大げさに描いたわけですが)
まあ、当時のありのままとちょっと違っても、それがきっかけになって「原作を読んでみようかな」とか「本当はこんな風だったのね」と
興味を持つ事が大事なんです。
で、昨今のファンは「イケメン顔じゃないと許してくれない」という一文は非常に重要ですね。
宝塚が宝塚である限り、リアルにやりゃあいいというものではなく、そこに「夢」と「美」と「愛」がなければ成立しない。
それゆえに「夢夢しい」だの「おとぎ話的」だのって悪口を言われるわけですが。
戦前も戦後もファンが要求するものが変わらず、それでも上演したかった「モンテ・クリスト伯」だった・・・・
やっぱり男が憧れる世界だと思うので。それを女性にも理解できるように書いたという事では
中西氏に比べると石田先生の作品は「成功」したと言えるでしょう。
役の配分もまあまあ。よくぞ1時間半にまとめたと思います。
ラストのメルセデスが剣をとってエドモンと戦おうとするシーンでは不覚にも涙が。
やっぱり「母なのです」的な場面には弱い。そういう定番だけど泣かせるシーンを入れたのもよかったと思います。
娘役もそこそこ活躍しているしね。
ダングラールの奥さんのいきなりの変貌ぶりは笑えたけど。
出演者について
凰稀かなめ・・・「復讐」という迷いのない一本道を歩き続ける男を演じるというのは、面白いしやりやすいし
彼女にぴったりだったのではないかと思います。
しかしながら、欲を言えばあと2・3年後の円熟した所で見たい。
それというのも、凰稀は声が高くて軽いのでなかなか、貫禄が出てこないんですね。若い頃はいいとしても
復讐を始める年齢にはまだ早すぎる感が。
演技にしても歌にしても可もなく不可もないというのが、果たしていいのか悪いのか。
今時のファンにとっては「イケメン顔」だからいいやって話になるんでしょうけど、老婆心であえて苦言を呈すなら
もう少し声を低く、そして重厚感を出して欲しいかな。(香寿たつき風に)
実咲凜音・・・・横から見ると美女なのに真正面からみるとダメだわ・・・といいつつも、貴婦人としてのメルセデスも母としての
彼女も上手に演じていたと思います。何より凰稀と息がぴったりでしたし。彼女の課題はさらに品格と貫禄を
身に着ける事でしょうか。
悠未ひろ・・・ダングラール。いわゆる定番の「悪役」で、毎回大劇場系ではこんな役ばかり。もう少し違う役が見たいかなあ。
緒月遠麻・・・ベルツッチオ。いわゆる「主人公のお友達」役で、しっかりフォローしていたけど、こういう役はもっと下級生が、
七海ひろきあたりが演じるべきで、緒月がヴァンパの方がよかったのでは?
朝夏まなと・蓮水ゆうや・・・いわゆる悪役3人組はあまり個性的とは言えず、ステレオタイプに終始した印象。
この二人もどっちがどっちを演じてもまあいいっか的な感じがしました。
悪役ならではの「怖さ」とか「するさ」がイマイチだったかな。
七海ひろき・・・ヴァンパ。いわゆる海賊のボス。コスチュームも似合ってたし化粧もいいし。一生懸命に演じて微笑ましいけど
よくよく考えると薄っぺらかもと。
寿つかさの司祭様以外は、どの役も個性がなく薄っぺらな印象だったのは、脚本がそうだったから仕方ない部分も
あったかもしれない。でも、そこをあえて崩して自分なりの「個性」を出すのが役者の仕事。
下級生は全員「役作りとは何か」という事をもう一度考えるべき。
宝塚にしか許されないセリフ回しがあり、大仰な演技が許されるのだから、それぞれがもっと自己主張して火花を
ちらしたらもう少し面白い作品になったかもしれないですね。
Amour de 99
副題が「99年の愛」とかいう割には戦後の演出家の紹介にとどまった印象です。
ヅカ歴長い人にとっては「懐かしいわ」でも、最近ファンになりたての人にとっては「さっぱりわからない」か
「お勉強になる」かどっちかでしょうね。
こういうショーってトップが出ずっぱりになる印象があるんですが、今回は少なめ?
「きゃーーあまりにも美しい脚」と感動した凰稀かなめのパイナップルの女王以降、あまり出てこない印象が。
その代わり、朝夏まなと大活躍?
ナツメさんの「メモアール・ド・パリ」の1シーンを丸々踊っちゃったもんね
あのシーン、すごく長いし展開もわかるんですが個人的にはあまり好きじゃないんです。ナツメさんがダンサーだった
というのはわかるし、上手だったけど、でもシーンとして長すぎたなあ。それを丸々やっちゃうんだもんな。
と、思ったら「シャンゴ」だし。
当たり前ですが「シャンゴ」そのものは見てません。でも当時、外国から振付家が来てすごくレッスンが大変だった・・・と
「ばらよ美しく咲け」の安奈淳のワンシーンで描かれていたような?
でも凰稀&緒月のカップリングは頂けない・・・あまりにも怖すぎる
要するに演出家として悠未・朝夏・緒月のバランス配分が大変だと暴露しているようなもんですよね。
上級生が団子状態になっているので「蓮水、七海が浮かばれないよなあ・・・」とぽつり。
前作が1本立てだったので、今回が実質的にトップとして初のショー作品になったかなめちゃん。
衣装も沢山新調されて、眼福 やっぱり「白」は新調がいいって。お古はすぐわかるしね。
トップとして真ん中に立ってる彼女は、とにかくかっこいいし、何を着てもよく似合う。
明るい宙組の象徴だなと。
その明るさとか華やかさを下級生に受け継がせて下さい。