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Channel: ふぶきの部屋
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韓国史劇風小説「天皇の母」39(フィクションだって)

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マサコは何となく自分を取り巻く環境が変わってきた事には気づいていた。

ハーバードに入ったのはいいけど、なかなか友人が出来ず、せっかく優等賞をとっても

誰も喜んでくれない・・・「マサコはブレーンだから」と陰口を叩かれているのは知ってる。

ブレーンって・・要するに融通のきかない頑固者とかそういう意味?

どうしてそんな風に見られるのか本人的には全くわかっていなかった。

なぜなら、彼女には自分の性格を省みる余裕がなかったからだ。

父の期待に応える為には、とにかく勉強しなければならなかったし、それでも何となく

不満げに見える父の表情を垣間見つつ、どうしたら「マサコは素晴らしい」と言って

くれるのかと、そればかり考えてきたからだ。

母は相変わらず双子にかかりきり。

小学校受験で落ちた経験と、高校までの数々の行状に母はすっかり打つ手なしという

感じで、最近は「とにかく問題を起こさないでくれればね」としか言わない。

妹達の方が扱いやすいと思っているのかしら?

自分を自分として認めてくれる存在が必要だった。

無条件に褒めてくれる、庇ってくれる人が必要だった。

それには恋愛が一番・・・・と思って、何人かと付き合ったが結局、父が気に入る人は

誰もいなかった。

大学の中で人脈を作る事も出来ず、恋もなかなかうまくいかない。

そうはいっても、旅行に誘えばついてくる人くらいはいるわけで。

「宿泊代は持つから」って言えば、ほいほいついてくる。

いつの頃からか「友情」とはそういうものなのじゃないかt思い始めた。

 

そんな彼女に転機が訪れたのは、大学卒業と同時に東大に学士入学が決まり

さらに外交官試験に受かったあたりからである。

「何でアメリカで働かないの?」と聞かれる。

本当は自分がアメリカで通用するような人間ではない事を知っている。

議論とか説明とか・・・コミュニケーションがとても苦手だからだ。

その点、日本ならそんなに喋らなくてもいいし。

でも一応「根なし草になりたくないの」と答えておいた。

「根なし草」っていい言葉だなあと思う。そう、自分は日本人だし日本の為に

仕事する。日本には必要な人間。外国でふらふらする浮き草人生はノーだ。

 

そんな折も折、日本の写真週刊誌から取材の依頼が。

父は受けろという。

「ハーバード大出で東大に学士入学に決まっていながら外交官試験もパスした

スーパーキャリアウーマン。しかもお父様も外交官という超ハイソなお家柄の

お嬢さん」というコンセプトだった。

もう嬉しくて仕方がなかった。超ハイソ?キャリアウーマン?

この先、全ての栄光と富が手に入りそうな気がした。

有頂天になって写真に収まる。

こんな風に取り上げられる事自体、人生で初めての経験。

そして父からは「すごいな」と言われた。

(まさか父が画策していたとは思いもよらず)

雑誌にはヒロノミヤの記事も一緒に載っていた。学友らと食事をしたという記事。

それが偶然だったのか故意だったのか自分にはわからないけど。

でもとにかく人生の中で初めて「褒められる」経験をしたのだ。

これからはスーパーキャリアウーマンとして父と同じ職場で働く事が出来る。

マサコは生まれて初めて幸せだと思った。

 


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